ブログ開設

猫も杓子もやっているブログなどやりたくないと思っていたが、これも修行のうちと思い直し、ブログを開設することにした。
不定期更新となるが、たまには来ていただきたい。

それにしても便利な時代になった。
こうして自身の主観や心情を吐露する場が、簡単に手に入るのは、私の世代にとっては信じ難いことである。
どんなに取るに足らない自分であっても、世の中に何がしかの主張や意見を発信できるのである。
十冊しか本を読んでいなくても、十本しか映画を観ていなくても、「この映画は面白くない」だの、「この本はだめだ」だの言えるのである。
かつてAMAZONのコメント欄で感じたことだが、たとえ中学生でも、才能豊かなクリエイターや作家を潰すことができる時代なのだ。
クリエイターや作家など、創造を商売にしている者たちは、ネット大衆の恐ろしさの前にひれ伏しつつ、戦々恐々として作品を発表していかねばならないのだ。

私には、どうしても忘れられない経験がある。
二流の版元からデビュー作を出した頃、あるホームページに書評が載った。
内容はそれほどひどくないものだったが、拙著を読破していないことが明白なものだったので、私はメールを打ち、取り下げてもらいたいとお願いした。
さらに、友人のサイトの掲示板に、「ひどい目に遭ったよ」といった調子のカキコミをした。
それらの行為に激怒した相手は、別のサイトに拙著の誹謗中傷を書き、さらにAMAZONのコメントにひどいことを書いた(まだ残っている)。
これには参った。
そんなことをされると思っていなかっただけに、心底、驚いた。
早速、AMAZONに抗議して消してもらったのだが、今度はAMAZONの規定に反さない、うまい表現で、またコメントを載せてきた。
私はネットで生きる人の底知れぬ恐ろしさを痛感した。
完全に敗北したことを認めた私は、もう二度と彼には関らないことにした。

しかし、今にして思えば、彼には感謝の言葉しかない。
というのは、当初、私はプロ作家にかろうなどとは露ほども思わず、北条家の復権がなされれば、筆を折ろうと思っていたからである。
しかし、彼のおかげで、闘志に火がついた。
「武田家滅亡」はベストセラーになり、その後も順調にメジャーからお声がかかっている。
現在、メジャーの企画会議に通っているものだけで四本を数え、締め切りプレッシャーを感じるくらいの作家になれた。
今でも、あの時、感じた闘志は衰えていない。
彼のことを思い出したわけではないが、今日はデニーズで六時間集中執筆という荒行に挑み、やり遂げた。
彼には心からお礼を言いたい。
作家としての今の私があるのは、彼のおかげである。
そして、一言、付け加えたい。
直木賞取るまで生きていろよ!」

仍如件