インタビューその2

志摩「次回作はPHPからの文庫書き下ろし『北条氏照 秀吉に挑んだ義将』でしたよね」
伊東「はい、七月初旬に出ます」
志摩「こちらの作品は、どのようなものなのですか」
伊東「氏照の生涯を正攻法で描いた怒濤の歴史小説です」
志摩「最も得意とする人物ですね」
伊東「そうですね。味わい重視の柔弱な歴史小説が幅を利かす昨今ですが、堂々たるヒーローを描くことで、原点回帰を目指したのです」
志摩「さすがですね。北条氏は自家薬籠中のものですから、これからも楽しみですね」
伊東「ただし、北条家とも氏照とも、これで決別する決意を持っています」
志摩「それは寂しいですね」
伊東「とは言いつつも、今まで書き溜めたものもあるし、頭を掻きつつ戻ったりもします」
志摩「浅い決意ですね」
伊東「決意というのはそういうものです」
志摩「もうそれはいいのですが、この作品で、何を伝えたかったのですか」
伊東「生き様を貫くことの大切さです。いったんビジョンを掲げたら、何があっても、それに邁進することこそ、漢というものではありませんか」
志摩「最近は、偉い人でも、ぶれまくる人が多すぎますからね」
伊東「だからこそ、<ぶれない漢>氏照が、もっと重視されてしかるべきなのです」
志摩「戦国武将ファンには涙ものの小説ですね」
伊東「そうなってほしいですね。樋口与六などという輩がちやほやされている世の中ですからね。もっと筋の通った正義の漢が、クローズアップされるべきなのです」
志摩「すごい気合いですね」
伊東「まあ、文学的にどうこうというよりも、ストレートな武将ものを楽しんでいただきたいものです」
志摩「さて、祭りの手伝いにそろそろ戻らねばならないですね。最後にお尋ねしますが、今後の構想や展望をお願いします」
伊東「今後は、私が最も得意とする滅亡や終焉をモチーフとしたジェットコースター展開の長編と並行して、ストーリーテラーとしての本領を発揮できるような中編や短編を書いていきたいと思っています。そして、戦国という時代にあえて縛られた上で、真のジャンルレスとは何かを追求していきたいと思っています。つまり、舞台は戦国でも、ミステリーあり、純文学あり、ファンタジックロマンありといった具合ですね。いうなれば、歌って踊れて司会もできる歴史小説家になろうと―」
志摩「ちょっと違う気もしますが―」
伊東「まあ、それはどうでもいいのですが、そのショーケースというか、マニフェストが『戦国奇譚 首』でもあるわけです。また、「KENZAN Vol.9」(7/10発売)から連載が始まる読み切り短編シリーズも、「首」同様のインパクトと同時に、歴史ミステリーの要素もふんだんに取り入れていきたいと思っています。「首」は「ショットガンの一撃」プラス文学的カタルシス(欲に取り付かれた人間の悲喜劇)がモチーフでしたが、今回の連載は、「ショットガンの一撃」プラス歴史ミステリーというところに、違いがあると思います。同じところには、留まってはいられないですからね」
志摩「今日はありがとうございました。それでは、山中城まつりで思い切り暴れましょう」
伊東「勢い余って、首まで獲らないようにして下さい(笑)」