憂慮

ここ一、二年、ひじょうに心配になってきたことがあります。それは三十を過ぎた方々の<オタク>化現象です。世の中、あまりにアニメ、ゲーム、アイドルの話題が溢れ過ぎていませんか。それもいい年こいた方々が、そうしたものに時間と資金をかけ過ぎていませんか。今までは「人のことはどうでもいい」と思ってきたのですが、すでに日本の文化が失われる危険水域に達していると思います。
四十五歳を超えてからとみに思うのは、「人に与えられた時間は限られている」ということです。私も若い頃は、ウインド・サーフィンをはじめとしたスポーツに没頭し、多くの時間を費やしてきました。友人と呑むのも好きでした。でも、今更ながら思うのは、そうした時間を読書に充てていれば、どれほど人間的に成長できたかです。そうした楽しいことを思い出すほど、「時間の使い方を誤ったな」と、今では悔やんでいます。
若い方も仕事は忙しいでしょう。週末は友人と呑みたいでしょうし、休日にはゲームでもやってくつろぎたいでしょう。でも、あなたが無為なことにかけている時間を、少しでも人間的な研鑽にかけるべきなのです。そうすれば、人生が異なる角度から見えてくるはずです。
正直申し上げて、今の若い方々には上昇意欲がないように感じます。われわれの若い頃は、無理して難しい本を読み、無理してプログレを聴き、無理してアート映画を観ていました。初めは虚勢でも、向上心なきところに成長はないのです。難しい本でも無理して読んでいれば、そのうち読めるようになるものです。そのチャレンジを已めてしまっては、何のために人間をやっているのかわかりません。知的冒険ができることこそ、人として生まれた甲斐があるというものじゃないでしょうか。
おかげさまで、今では無理してやってきたものすべてが趣味になりました(笑)。
わかりやすく申し上げると、「クレヨンしんちゃん」なんてものに、大の大人が感動するのはおかしいのです。あれは「子供向けアニメにしてはがんばっているね」程度のものでしょ。あなたの感性は、それで大丈夫なのですか。
こうしたことは書きたくなかったのですが、已むに已まれぬ思いから書きました。不愉快になられた方もいらっしゃるかも知れませんが、ひらにご容赦下さい。反論をお待ちしております。