2009/11/14「鉢形オフレポート」第一部

カズさん主催の北条系城郭をめぐるオフ会も、二年越しで八王子、八王子搦手、滝山に続き、今回で四回目を迎えました。今回は遠隔地である鉢形城ということもあり、参加人数が危ぶまれましたが、何と40名近い参加者を見ました。当日は完全な雨天で開催が危ぶまれましたが、午後から晴れるという予報もあり、開催を強行しました(ぎりぎり正解でした)。
 私の場合、午前は、鷹取さんと平さんと三人で、朝駆けを二城(腰越城と中城)しましたので、まずはそちらから。
 なぜ午前の部からレポートするかと言うと、比企郡の城には素晴らしいものが多く、皆さんにも知ってほしいからです。
 レポートは午前の部、特別展、鉢形城という三部構成にて。

【腰越城】
 これだけの雨の中、山城に上ったのは初めてでした。そのかいあって、一年に一度くらいしか出会えない名城に行くことができました。
 アクセス方法や城の概要は、たくさんのサイトで紹介されているので省略します。基本的には悌郭式山城です。詳細については、こちらのサイトの解説がいいかなと―。
http://www5.plala.or.jp/tutinosiro/kosigoejyou.html
 この城に来て、あらためて「城」とは殺戮のための施設(装置)だということを痛感させられました。この城の「城取り」(デザイナー)は、「キル・ゾーン」、「キル・ポケット」という概念をよく理解しています。東半里にある青山城とは、造りも工夫もかなり似通っており(特に虎口への導入路)、「城取り」は、地域国人山田氏の家臣の誰かということになるのでしょうが、杉山城というオーパーツも近くにはあり、同じ「城取り」の可能性もあります。この城に上るだけで、戦国時代を生き抜いた「名も知れぬ天才」の息遣いを、近くで感じられるのですから興奮します。ちなみに発掘調査によると、十五世紀後半に焼かれているようで、城郭攻防戦の痕跡も見られます。どんな戦いだったか知りたいですね。
 ということで、前置きが長くなりましたが、縄張りなどは、他のサイトで、いろいろ取り上げられていますので、ここでは要点だけ。
・ 導入路の工夫により、敵をキル・ゾーンに誘い込む(特に本曲輪虎口に至る坂虎口と虎口前曲輪の工夫は秀逸)
・ 「囮虎口」という小技により、敵をキル・ポケットに誘い込む。
・ 切留(行き止まり)の横掘を走らせて、敵をキル・ポケットに誘い込む。
もう完璧です。
これをスカーレット・ヨハンソン状態というのでしょうね。
悩ましくて眠れません。

【中城】
 八幡台という台地上にある変形型方形居館跡です。変形型というのは、台地上の地形に合わせているため、土塁と堀は必ずししも方形を示していないためです。それでも単郭なので、時代比定が難しいです。
完存とは言えないまでも、小川町の中心部にありながら、戦国以前の形式のこの城が、よくぞ残っていてくれました。
 単郭の四囲に土塁(でかい)と堀(深い)をめぐらせるという基本構造をベースに、二重土塁(雨のためよく見れず)、微妙な屏風折れ(横矢掛かり)、喰い違い虎口、物見台というトッピングも効いており、まさに「基本は醤油ラーメン」だけど、しっかり隠し味を持っているという感じです。まさに正統派美人だけど、えもいわれぬ味があるという木村佳乃という感じかな。
 ということで、「太田道灌状」には、「文明六年(1474)元旦、長尾景春征伐のため、北上を続けた私(道灌)は、上田上野介正忠の居館がある小河に留まり正月を迎えた」という一節があり、それが中城ではないかと比定されています。ここで道灌が正月を迎えたと思うと、感慨深いものがあります。

 ということで、誰も期待していないと思われますが第二部へ。
写真は、腰越城北端の二重堀切、囮虎口の石積み、東端の袋小路の横掘、中城の土塁