『KENZAN! Vol.10』本日発売!


本日発売の『KENZAN! Vol.10』では、『天下人の失敗学』で述べた”本能寺の変”についての私見を、小説版にしています。短編で出してしまうのはもったいない気もしたのですが、勝負の年2010に向けての露払いの意味も込めて、短編のフォーマットで執筆しました。
小説誌への連載はある種のコンペティションです。手を抜いた作品を発表した時点で負けです。乾坤一擲の作品を書き続けられてこそ、他の作家さんのファンを引っぺがすことができるのです。特に私の場合、長編連載でなく短編一発勝負ですので、他の作家さんのファンは長い目で見てくれません。つまらない作品を書けば、「こんなもんか」となってしまい、ハードカバーを購入いただくことは永遠になくなります。
しかも他の作家さんのファンは、好きな作家の作品を贔屓目に見ますので、不利は否めません。ボクシングのホームタウン・ディシジョンなんてレベルではないのです。判定で勝つことは至難の業なので、KOしてこそ次の段階に進む切符を手にできます。
それゆえ、今回も全力投球しました。これ以上のものを他の作家さんが用意すれば、私の負けですが、そうやすやすと負けるわけがないと自負しているのはご存じの通りです。
記念すべき私の連載開始となった『KENZAN! Vol.9』をご購入いただいたのは、知り合いではTONOさんとマダム蛇子さんだけだったので、私には失うかも知れない『KENZAN!』購入ファンが二人しかいないという強みもあります(笑)。
賞を取っていない作家は、私一人ですから(笑)、またしても最後尾グリッドからのスタートでしょう。それでも、スタートラインにはつけたのですからレースには加われます。
“振り向けばブーツェン(古すぎ!)”と言われるような粘り強い走りを、此度もお見せいたしましょう。

『死の十字路』


 昨日、横浜近代文学館に行ってきました。「大乱歩展」の記念行事として、『死の十字路』が上映されたためでした。この映画は、1956年公開という古いものですが、その完成度が高く、私が子供の頃にも「キネマ旬報」で取り上げられていた記憶があります。ようやく念願叶い、この名作を観る機会に恵まれたわけですが、その古さから一抹の不安もありました。
 ところが、上映が終わった瞬間、そんな不安など銀河の彼方に吹き飛んでしまいました。やはり乱歩は乱歩なのです(笑)。
 この作品は、クライム・サスペンスとしてほぼ完璧な完成度を示しています。すべてのシーンが無駄なく配され、その前後関係も問題ありません。
 あらすじは省略させていただきますが、ご興味があればこちらへ。
http://home.f05.itscom.net/kota2/jmov/1999_04/990424.html
タイトルそのままの「運命の交差点」(銀座四丁目?)で錯綜する人間模様は、乱歩ならではの必然と偶然の交錯する見事なプロットとなっています。
 倒叙法という『刑事コロンボ』と同じ形式を取ることで、捜査サイドよりも犯罪者サイドの人間ドラマに重きを置いた作りは、犯人に対する観客の共感を呼び覚まし、メロドラマとしても見ごたえがあります。『刑事コロンボ 殺人処方箋』に似た作りですが、もちろん乱歩の方が先です。
 さらに、古きよき東京の風景は、私のようなオールドファン(と言っても40代ですが)のノスタルジーをくすぐってくれます。
 惜しむらくは、映画なので展開を急いだためか、二番目の人間模様が終盤で詰めが甘くなること、刑事が決定的な手がかりを掴むプロセスが事後説明で終わってしまったこと、大阪志郎演じる私立探偵の心中の動きがうまく描ききれていないことなどがありますが、こうした瑕疵は「強いて言えば」程度のことで、作品の価値を減じているほどではありません。
 この作品を発掘し、上映いただいた主催者側に感謝すると同時に、どこかで再びこの作品の上映機会を持っていただきたいと切に願っております。そして一人でも多くの乱歩ファンに、この作品を観ていただきたいと切に願っております。さらに、これだけの品質の作品ですので、リメイクすれば、また面白いのではないかと思います。

勝間和代と香山リカ(成り行きが楽しみです♪)


『天下人の失敗学』が発売され、二週間ほど経ちましたが、おかげさまで、書店様からの引きが強いようで、版元在庫はほとんどなくなったようです。もちろん、ここから実売がどれだけあるかによって、返品率が決まりますので、ぬか喜びはできません。少なくとも、書店様の目利きの方々には、おおむね好評のようです。
天上人の世界では(笑)、香山リカさんの勝間和代さん的生き方批判本『しがみつかない生き方』が、売れているようですね。
勝間さんの本を読んだことはあるのですが、その発想の根源に、「とんでもない勘違い」があって、失笑の連続でした。確かに勝間さんは成功者で挫折を知らないのでしょうね。だから発想の基点がすべて「成功者である私」なのです。稀にいらっしゃいますが、「凡人の哀しみ」なんてものには、一生涯、共感なんて抱かないのですよ、こういう方は―。
しかも勝間氏の場合、かなり女性特有の発想が強く、とにかく視点はすべて「私」です。これでもかこれでもかと、胃液吐くまで「私の場合は」の連続です。他人なんてものを深く洞察しようなんて考えたことがないのでしょうね。カツマー本を読んでいる最中、「こんな生き方ができたら楽だろうな」なんて考えたことを思い出します(爆)。
私はブームの頂点の頃に読んだのですが、「これは一年後には、相当バッシングされるな」と思っていたら、その通りになりつつあります。もっとも、すでに十分稼いだので、「嫌ならいいわ」状態でしょうけど(笑)。
同じ「生き方本」のライターとして、勝間氏がイチローだとしたら、私なんてベイスターズブルペン捕手のようなものです。だけど、ブルペン捕手は投手に気持ちよく投げてもらうために、人の心の隅々まで知ろうとします。一流投手でなくても、それなりによさを引き出します。投手の辛さも共感できます。何と言っても、主役は投手(読者)なのですから。
『天下人の失敗学』はそんな本ですが、それでよろしかったら、ぜひ手に取って下さい。凡人は凡人なりに、うまく生きていきましょうや。

『天下人の失敗学──すべての人間は4つの性格に分類できる』じわじわと売れてきました


めっきり冷えてきましたね。
表紙も冬のものに変えようと思ったのですが、そうなると季節ごとに変えることになるので、めんどくさいし、思い切って若沖にしてみました。
2006年にプライスコレクション「若冲と江戸絵画」展というのを東京国立博物館でやっていました。
もちろん行ってきました。
若沖は鶏の絵がいいのですが、北条家のトレードマークの虎にしました。

さて、おかげさまで拙著『天下人の失敗学──すべての人間は4つの性格に分類できる 』がじわじわと売れてきました。
売れていることよりも、ビジネスで過去に知り合った方々から読了のメールが次々と入り、「絶賛」のお言葉をいただいたことが何よりうれしいです。
文芸本の時はやらないのですが、今回は実用本ということで、多くの方々にお知らせしたのがよかったようです。
皆さん、献本もしていないのに、速攻で本屋さんに行って購入いただき、感謝の言葉もありません。
この場を借りて、もう一度、御礼申し上げます。
実用本だと頼りになるのはビジネス上の知人なのですね(感心)。

ということで、フィードバックされたものに「大筋、その通りだと思うのだけど、自分は違う」というものがあります。
添付のエクササイズの点数にばらつきがあったためのようです。
実は、そこがポイントなのです。
セミナーだとこのあたりをじっく解説するので、ほとどの方にばらつきはみられませんが、本書の場合、「歴史部分を強くしよう」という編集方針もあり、その説明を薄くしたため、多くの方の点数がばらついているようです。
ここでは詳述を避けますが、原則として「己を知っている」人ほど、ばらつきはありません。
ばらつきがあるということは、まだ己に対する理解が不十分ということなのです。
逆にそれがわかったたけでもよかったのではないかと思います。

ご購入していただいた皆様のお言葉には本当に励まされました。
心から感謝いたしております。

滝之沢城について

 リクエストに応えまして、滝之沢城のレポートです。
 153号線を南下し、治部坂峠から平谷村を目指します。その途中にあるのが、”とつばせの関”と滝之沢城です。
 この関と城はセットになっていて、平時は関の機能だけが求められ、いざ戦時となると、南西にあたる美濃・三河方面からの敵をここで防ぐ役割が課せられています。むろん敵とは織田・徳川勢であり、この関と城を守るのは武田家傘下の国衆下條氏です。
つまり、恒常的に人が住んでいる城ではなく、陣城、陣所、関城といった類の城です。
 この城は、西から東に流れる柳川と三州街道をかき抱くように両岸の急崖が迫った地に築かれています。武田領国と織田領国の境目は、もっと南西の根羽村ですから、本来は根羽村に防衛線を築くはずなのですが、そこは信玄、最も地形的に防御に適した地に防衛ラインを築きました。つまり、南北からせり上がるように急崖迫り、その内懐の東側の地に、この陣城の本陣が築かれています。
 戦いの経過がどうなったのか、いかに下條一族が戦ったのかについては、ほどなく発表させていただく短編でお楽しみ下さい。

写真は土塁、石積み等です。もちろん石積みが当時の物かどうかはわかりません。


近況報告

 考えてみたら、ここのところ随分と、ブログを更新していませんでした。
 とにかくいっぱいいっぱいで(笑)、ブログを更新する余裕がない日々を送っています。そうした中でも、現地取材だけは欠かさずに行うべく、10/24-25に伊奈谷に行ってきました。
 これは、現在、『KENZAN!』連載中の連作短編のための下見も兼ねています。
 余裕がなく、詳細のレポートはできそうにありませんので、行った城だけでも書いておきます。

秋の伊奈谷再訪
 10/24 長岳寺、滝ノ沢城(初見)、吉岡城、神之峰城(初見)、知久平城(初見)、座光寺南城
 10/25 大嶋城、名子城、松岡城、飯田市上郷考古博物館「南信州の山城」展
    この展示には、特別講演「吉岡城 歴史と城郭の特徴」もありました。

 『天下人の失敗学』が発売されて約一週間が経ちました。例によって、静かな立ち上がりのようです(笑)。買ってくれさえもらえれば、価格以上の付加価値を提供できると信じているのですが、その「買ってくれさえもらえれば」までいくのが、やはりたいへんです。
 とにかく粘り強く、良質なコンテンツを創り続けるしかないのでしょうね。
 写真は、「中世の伊奈谷を代表する段丘の城」松岡城です。

『天下人の失敗学 すべての人間は四つの性格に分類できる』紹介第三弾!


不肖伊東潤初のビジネス新書『天下人の失敗学 すべての人間は四つの性格に分類できる』が、本日、いよいよ発売となりました。
「なんだ、新書か」と思っている皆さん、確かに、新書だけで一ヶ月100冊以上の新刊が出ているのは事実です。しかし、私が”ワン・オブ・ゼム”の実用本を書くとお思いですか。既成の概念を覆すような新機軸が打ち出せていなければ、私が執筆するわけがないのはご存じですね(笑)。
文芸作家がこうしたものを書くのはたいへん珍しく、前例を探したのですが、なかなかないようですね。それゆえ、どういう形でビジネスマン層に受け容れられるか楽しみです。もちろん本書を契機として、文芸本の読者層が広がることを、ひそかに願っているのも事実です。
内容については、タイトル通りなので説明の余地もないほどですが、少なくとも、読み始めたら止まらないことだけは保証します(笑)。文芸本の場合、特に長編では、「ゆっくりと大きな獣が起き上がるように」始まり(説明が多いので)、中盤から後半に至り、ハイスピード展開していくというのが私の作風ですが、今回ばかりはスタートから飛ばせるので快適でした。
漢字が多くても、難しい言い回しを使っていても、なぜかリズム感があるので、どんどん読ませてしまうという技術がプロの執筆家には必要ですが、ようやく私も、この新書執筆という試練を潜り抜けることで、それが会得できたような気がします。「二時間で読破した!」なんてお言葉も寄せられるでしょうね。
しかも文芸と違い、二度読み、三度読みすることで実用性が増しますので、さらっと読めるけれど、読後納得感の高い文体は必須の技術でした。図書館で借りさせないためにも、反復読書していただくことで、実用性を高めることは意識しました。
「いくら伊東さんの作品でも、私は文芸しか読まないから今回はパス」というあなた、食わず嫌いはいけません。歴史ファンにも十分に満足いただけるよう、四人の天下人の人生をトレースしながら、その成功と失敗に対する伊東流解釈が満載されていますので、十分楽しめる内容となっております。しかも「本能寺の変の謎」にも、私なりにアプローチしていますので、飽きさせないこと請け合いです。
読者の実生活に、直接、”利く”本を執筆できたことに、今はたいへん満足しています。こうした形で社会貢献できるのは執筆家冥利に尽きます。特に、会社内の人間関係で悩んでいる方々の一助になれるかもしれないと思うと、喜びもひとしおです。
もちろん、さらに詳しい処方箋を、第二弾、第三弾で用意しておりますので、この第一弾が売れた場合は、すぐに執筆に掛かります。
また本書における、「本能寺の変の謎」についての伊東流解釈は、文芸作品としてもすでに脱稿しています。11/10発売の『KENZAN! Vol.10』にて、『表裏者』というタイトルで発表させていただきますので、そちらもお楽しみに!